ドッグウッドで花見


 皆さんは、花や草木の名前をよくご存知ですか?わが家の場合、園芸は家内が主担当で、私は何でも「きれいなハナだなあ」で済ませてしまうタイプですが、ケンタッキーに赴任して初めての春、そこかしこに咲き誇っていたハナミズキ(Dogwood)の名前だけはすぐに覚えました。

サクラの花

 ハナミズキは、春の訪れを祝う花です。残念ながら、アメリカには、お花見の習慣もハナミズキ前線の予報もありません。最近の冬は、いつまでも寒い日が続いて開花も遅く咲いた花にも元気がないように見えます。

 アメリカの首都ワシントンDCのポトマック河畔のサクラ(ソメイヨシノ)は1912年に当時の東京市から寄贈されたのが始まりですが、ハナミズキはその「お返し」に選ばれて日本に渡ったくらいですから、正にアメリカ東部の春を象徴する花といえましょう。北は、メイン州、カナダのオンタリオ州からカンザス東部まで、南は北部フロリダからテキサス、さらにメキシコの北東部まで分布しているのだそうです。

 ハナミズキには白とピンクの花をつける種類があってサクラと区別がつきにくいかもしれませんが、近寄って花びらを数えてみると4枚(サクラは5枚)ですから簡単に判定できます。各地の人々に愛されていて、ノースカロライナでは州花、ミズーリでは州木、バージニアでは州花+州木に指定されています。

 英語では「ドッグウッド(Dogwood)」ですが、広く「ミズキ科」全般を指すこともあるようです。きっと「犬」が「木の実」を好んで食べるのだろうと思い込んでいたら、そうではなくて、昔、皮膚病の「犬」をハナミズキの樹皮を煎じた汁で洗ってあげたからだそうです。

 木質が固く、その昔はハナミズキの枝でダガー(Dagger=短剣)を作ることから「ダッグウッド」と呼ばれていたのが「ドッグウッド」に変化したとの説もあるそうで、実際、串や矢、家具の取っ手、織機の杼(ひ)、テニス・ラケットなどに使われてきたそうです。


キリストの十字架


 最後に、アメリカに伝わるかわいらしい伝説をご紹介しましょう。

 Legend of Dogwood

In Jesus' time, the dogwood grew
To a stately size and a lovely hue.
'Twas strong & firm it's branches interwoven
For the cross of Christ its timbers were chosen.
Seeing the distress at this use of their wood
Christ made a promise which still holds good:
"Never again shall the dogwood grow
Large enough to be used so
Slender & twisted, it shall be
With blossoms like the cross for all to see.
As blood stains the petals marked in brown
The blossom's center wears a thorny crown.
All who see it will remember me
Crucified on a cross from the dogwood tree.
Cherished and protected this tree shall be
A reminder to all of my agony."

ハナミズキの伝説

キリストが生きておられた時代には、

ハナミズキは堂々とした大木だったのです。

枝も固くて丈夫でしたから、

キリストの十字架材に選ばれてしまいました。

そこで人々が嘆き悲しむのを見たキリストは、

今日まで変わらない約束をしてくれたのです。

「これからは皆さんの木が、

 十字架に使われるほど大きく育たないよう...

 幹はかぼそくよじれ、

 花は十字架をかたどって咲くことでしょう。

 花弁に茶色の血の染み、

 花芯にはいばらの冠、

 ハナミズキを見るたびに、

 十字架にかけられた私を思い出してください。

 ハナミズキをいつくしんで、

 私の受難の苦しみを分かち合ってください」

 詩の作者は不詳…翻訳は私です。ちなみにキリストの十字架の材質については聖書にも記述されていないそうです。