議員は下院が人口比、上院は州2


キャピトルヒル(連邦議会議事堂)

 連邦議会の議院は日本語で上下院と訳されるのが普通ですが、あえて直訳すれば、上院は元老院(Senate)、下院は代議院もしくは衆議院(House of Representatives)です。日本のように二院制がねじれ国会という立法の機能不全を招いたり、二院制が形骸化していたりしている国が多い中、アメリカの二院制は、各議院の正確や分担が明確で、めずらしく有効に機能しているようです。

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 連邦議会の議院は日本語で上下院と訳されるのが普通ですが、あえて直訳すれば、上院は元老院(Senate)、下院は代議院もしくは衆議院(House of Representatives)です。日本のように二院制がねじれ国会という立法の機能不全を招いたり、二院制が形骸化していたりしている国が多い中、アメリカの二院制は、各議院の正確や分担が明確で、めずらしく有効に機能しているようです。

 アメリカは「合州国(United States)」の名の通りで全米50州の寄り合い所帯ですが、各州は平等という考え方で議員数(1州2名)を割り振っているのが上院、人口比で議員数を決めているのが下院…総数435名で、最多のカリフォルニアは53議席が割り当てられていますが、アラスカ、モンタナ、ワイオミング、南北ダコタなどの過疎州やデラウェア、バーモントなど小さな州にはたったの1議席です。


下院は2年毎改選


 下院議員は、2年ごと遇数年11月の第1月曜日翌日(火曜日)に改選されます。連邦関係の選挙ばかりでなく、普通は、州知事から地方自治体の保安官の選挙まで、同じ日に一斉に行われますから有権者もたいへんです。複雑過ぎてたびたび電子投票のトラブルが問題になるほどですが、アメリカは農業を基礎に発展した国ですから、北から南まで、秋の収穫も終えて人々が一服する11月初旬を投票日として定めたのだそうです。


上院は1/3ずつ改選で任期6年


 上院議員の選挙も2年ごと、ただし一度に改選されるのは3分の1ですからひとりひとりの任期は6年ということになります。下院に比べて少人数、しかも任期が長いおかげでお互い気心も知れた議員仲間がじっくり話し合えるのが上院の特色。立法の主役は下院ですが、上院には下院に対するチェックとアドバイスの機能が期待されています。立法府が条約の批准と閣僚や判事、大使や軍の高官などの承認人事を通じてホワイトハウスを牽制する役割も上院限り…上院議員は、自分の選挙区の利害を忘れて、大所高所からアメリカをリードして行く高潔な人物でなければいけません(事実、世間の人々も、下院議員よりも一段上の政治家として見て尊敬しているようです)。


党議拘束なし


 さて、さすが個人主義のアメリカというべきか、法案議決の際に政党の「党議拘束」がないのもアメリカ議会の特徴です。議員は、所属する党の方針に反する投票もできるのですが、重要法案については賛否の理由を説明して、選挙区の有権者に理解を求めなければなりませんから、「党議拘束」通りに投票するより多難かもしれません。投票行動や発言に一貫性を欠くような議員は、次の選挙で自滅していまうこと確実です。

 下院議長は英語ではスピーカー(Speaker)…下院議員の互選により、当然のことながら多数党の議員が就任します。上院議長(President of the Senate)は形式的にはアメリカ副大統領と定められていますが、実際に副大統領が上院に関与することはなく、暫定議長(President pro tempore)が本当の議長を務めます。総数100名の上院議員には、第一位から百位まで、連続当選回数や通算在籍期間など11の規定で明確な序列(Seniority)が定められているのですが、暫定議長には筆頭順位の上院議員が就くことになっています。

 議長とは別に、上院にも下院にも、民主党と共和党それぞれに院内総務という役職があります。多数党なら多数党院内総務(Majority Leader)、少数党なら少数党院内総務(Minority Leader)と選挙結果により名前が入れ替わりますが、日本に当てはめれば国会対策委員長という役どころになるのでしょう。ニクソン政権(共和党)時代にアグニュー副大統領が汚職を理由に辞任した際には、下院で民主党が多数党だったため、下院で共和党筆頭のフォード少数党院内総務が後任副大統領に人選されました。その後、ニクソンがウォーターゲート事件で辞任して、あれよあれよと見る間にフォードが大統領になってしまったのは皆さんもご存知の通りです。