牛肉のカットのし方や部位の呼称は国によって違いますが、カナダでは、お尻を「ラウンド」と呼ぶ代わりに「ヒップ」と呼ぶほかはアメリカと全く同じです。
ステーキカット
(リブアイ・サーロイン・フィレミニオン・ニューヨークストリップ・Tボーン)
アメリカ式の牛肉カット部位の呼称 |
牛の「リブ(肋骨=あばら肉)」は、焼肉なら骨付きカルビの部位。アメリカ人にも珍重されるカット部位の一つで、特に上等なお肉は、グリルして「リブアイステーキ」になったり、オーブンでローストして「プライムリブ」になったりします。
肉屋さんで買うときは、「リブロースト(Rib
Roast)」…これが、なまって日本ではロース肉と呼ばれるようになりました。リブの頭部側とチャックの一部が「肩ロース」、お尻側が「リブロース」で立派な霜降りが期待できる部位です。スペアリブは、同じリブでも豚のリブのことで、牛肉とは、一切、関係ありません。
イギリス式牛肉カット部位の呼称(⇒拡大) |
「ロイン」は腰を指す言葉です。ステーキに使われるお肉ですから、肉質の違いによってカット部位も5つに細分化されています。逆に、ステーキの名前から整理すると、サーロインステーキ、ショートロインのニューヨーク・ストリップステーキやT-ボーンステーキ、テンダーロインのフィレミニヨン、それに、リブのリブアイステーキの5種類を覚えておけば合格です。
レストランで高い方から並べると、一般的には、フィレミニオン⇒リブアイ⇒サーロイン⇒ニューヨーク・ストリップの順でしょうか?T-ボーン・ステーキは、T字型の骨を境にショート・ロインとテンダーロイン(ヒレ肉)がミックスした部位をカットしたお肉です。詳しくは末尾の一覧表をごらんください。
(おつまみ)
牛刺しにはロイン(腰)かラウンド(尻)
日本で牛刺しに使われるのはランプですが、日本式カットだとイギリス式のランプとも少しずれているようです。アメリカ式でいえば、ロインからラウンドにかけての部分に当たります。
牛刺しは、ユッケ中毒事件の余波で、日本でも表面に火を通さないとお店で出せなくなったそうですから、アメリカのスーパーで市販のお肉を生で食べるなどもってのほかですが、「アメリカ生活・e-レシピ」では、牛刺し代わりに夏のおつまみになる牛サーロイン煮をご紹介していますので、参考にしてください。
生肉による中毒は、アメリカでも絶えず起きています。包丁やまな板から、他の食べ物経由で菌が口に運ばれるケースが多いので、お肉の調理には特にお気をつけください。
e-レシピ たまには“牛刺し”が食べたいけど生肉はこわい
手軽にできる夏の一品
「タタキ風牛サーロイン煮」
夏は「牛刺し」をつまみにビール!!
…と思っても、アメリカでは、大都市の日本レストランにでも行かなければ食べられませんね。かといって、生の牛肉を自分で刺身にして食べるのもこわい。でも、沸騰したお湯に牛肉を入れて2〜3分煮るだけなら、表面に火が通って中はナマ。ちょうど、「タタキ」のような仕上がりのお肉になります。お肉はステーキ用の部位ならどこでもかまいません。全文を読む(2010年6月)
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(アイリッシュ料理)
コンビーフと黒ビール
固い部位のお肉でも、シチューにしたり、アメリカ式の蒸し焼きバーベキューにしたり、様々な召し上がり方がありますが、もう一つ皆さんにご紹介したいのがブリスケットをじっくり煮込むアイリッシュ料理の「コンビーフ&キャベツ」です。
3月17日のアイルランド人のお祭りセントパトリックスデーには、一般アメリカ人の家庭の献立も「コンビーフ&キャベツ」と黒ビール。
注
「Corn」は塩粒という意味で、元来はハムと同様に塩漬けされた保存食です。血圧が高めの方は、控えめにお召し上がりください。
ブリスケットは、ウシの胸の筋肉で少し硬めの部位ですが、煮込むと柔らかくて「缶詰のコンビーフ」そのままの味のある肉になります。調理時間は2時間から2時間半ですが、ほったらかしで煮込むだけで別に手間はかかりません。ブリスケットは型崩れしないので、吹きこぼれしないよう大きめの鍋を使えば大丈夫。
e-レシピ 牛肩ばら肉をじっくり煮込んでアイルランド料理
聖パトリックは“コンビーフ&キャベツ”と黒ビール
3月17日のセントパトリックスデーには、アイルランド系でもカトリック教徒でもない人たちまで、緑色の服を着て街に出るのが北米各地の風習です。この日の食卓の献立は、アイルランド系アメリカ人が大好きな家庭料理「コンビーフ&キャベツ」と黒ビール。牛のブリスケット(肩ばら肉)は胸の筋肉で少し硬めですが、じっくり煮込むと「缶詰のコンビーフ」のように味がある柔らかい肉になります。全文を読む(2012年2月)
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牛肉のカット部位一覧表(北米方式)
背肉
(ロース=ローストに由来する和製英語) |
チャック |
日本ではすき焼きやしゃぶしゃぶ、焼肉でお馴染みの上質の肩ロースの部分も含まれるはずですが、アメリカではもっぱらハンバーグ用のひき肉材料としての扱われています。 |
リブ |
あばら肉・・・韓国焼肉のカルビです。骨付きのショート・リブ、最上等部(eye)をカットしたリブアイ・ステーキなどに調理されます。 |
ショートロイン |
あまり酷使されない大型筋肉の部位ですから、柔らかく、特に1枚で大きなカットの肉を食べたい若者などには好まれます。別名がストリップ・ロイン…メニューには、ニューヨーク・ストリップステーキなどの名で載っています。腰椎を中心にカットすると、左右のT字型の骨を境にショート・ロインとテンダーロイン(ヒレ肉)がミックスしたT-ボーン・ステーキになります。脊髄は狂牛病のプリオンのたまりやすい場所ですから、T-ボーンのかけらを飲み込まないように要注意? |
生のT-ボーン肉 |
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サーロイン |
サーロイン・ステーキは「ステーキ」の代名詞です。比較的筋肉質の部分もあり、肉質によりお値段には幅があります。 |
テンダーロイン |
サーロインの特上部位です。フィレミニヨンに使われる柔らかで味のよいヒレ肉ですが、小型筋肉の部位で大きなカットは取れません。 |
トップ・サーロイン |
サーロインの中で、最も柔らかく上質な部位です。ヒレ肉は上等ですが牛脂が少ないので、バーベキューで焼くと肉が固くなってしまいます。トップ・サーロインなら、少し火が通り過ぎても柔らかく焼き上がります。 |
ボトム・サーロイン |
多少は歯ごたえがありますが、お値段はお手頃な部位です。 |
ラウンド |
脂肪分が少なくて、固めの赤身のお肉です。蒸し煮にしたり、干してビーフ・ジャーキーに加工するのに適しています。 |
腹肉 |
ブリスケット |
ヒッコリーで燻製するケンタッキー式のバーベキューやマリネ(酢漬け)に適しています。この部位を塩漬けして保存食にしたのがコンビーフ(corned
beef)です。 |
シャンク |
もっぱらシチューやスープ用として売られています。 |
プレート |
調べてみると、日本語のバラ肉(=Short
Plate)〜下がり肉(=Hanging Tender)〜ハラミ肉(=Outside
Skirt)などを含む部位のようです。日本では焼肉や牛丼などに珍重され、アメリカでは細切れのスカート・ステーキの形でテキサス-メキシカン料理のファジータなどに添えられますが、あまり全米的には用いられずハンバーグ用のひき肉にも回されています。 |
フランク |
筋の強い固い肉です。酢漬けにして焼き細かくスライスするロンドン・ブロイルという調理法が知られています。 |
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