アメリカの 「社会と歴史」・e-ガイド(印刷ページ

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5人に4人がクリスチャン

★事実上の国教 ★人種別に見る宗派 ★「出自」に由来する地域分布


事実上の国教


 アメリカは自由の国。信教の自由はもちろん認められていますが、5人に4人はキリスト教信者ですから、キリスト教は実質的に国教のような扱いを受けています。

 法廷で証人は聖書に手を置いて宣誓するのもそうですが、日本なら信教の自由の侵害で憲法違反に問われそうな事例が、ほかにもいっぱいあります。

 私たちが住むケンタッキー州のレキシントンは、プロテスタント福音派(Evangelicalists)の敬虔な信者が多数住んでいる「バイブル・ベルト」と呼ばれる一帯にあります。

 日曜日の朝は(教会に出かける人が多いので)ゴルフ場が混まず意外に予約が取りやすい時間帯です。お昼になると、外食店が、教会帰りの小ぎれいに装った家族でにぎわいます…子供の頃から、教会で、牧師さんのお説教を聴いて育つアメリカ人が今でも相当数いるのですね。


人種別に見る宗派


 下の円グラフをごらんください。アメリカ人を宗教を基準に分類すると、白人の部は、@カトリック信者、Aプロテスタントの主流派とB福音派の信者、Cその他(無信仰、モルモン教とエホバの証人のような諸派、キリスト教以外の宗教)の人々と、きれいに4等分されるのがお分かりですか?

 世界のキリスト教信者の3分の2を束ねるカトリックの場合は全米各地至る所に浸透していますが、プロテスタントの主流派は何といってもドイツ系アメリカ人が多い中西部が中心です。黒人の間ではプロテスタント福音派、ヒスパニックの間ではスペイン統治時代にメキシコに広まったカトリックが圧倒的に多数派です。

人種別に見たアメリカ人のキリスト教信者宗派別人口

白人(人口の68%) 

黒人(人口の12%) 

ヒスパニック(人口の15%) 


「出自」に由来する地域分布


 私が長く働いていた金融界では、ユダヤ系アメリカ人とモルモン教徒が幅を利かせています。日本の「士農工商」のように、中世のキリスト教には「金貸し」を卑しむ文化があったようです。

 また、別の話ですが、詳しく見ると、田舎ではカウンティごとに人々の出自が違い教会の宗旨も違うことがあります。日系企業の事務部門に二つのグループができて、注意深く観察するとカトリックとプロテスタントに分かれていた実例もあります。日本人の管理者が、こうした背景を知らずに職場の和を図ろうとしてもできるはずがありません。

 キリスト教信者の宗派別分布は、ヨーロッパの宗教改革とアメリカ移民の歴史に深く結びついています。

 バージニアとカロライナ植民地ではイギリス国教会(聖公会)が唯一の公認教会でしたが、独立戦争後はバプティストが奴隷を認める方針に転じ、保守的な南部諸州の最大宗派に発展していきました。

 ニューイングランド植民地には、メイフラワー号で有名なピルグリムファーザーズに続き、会衆派を中心とする清教徒が入植。綿工業が勃興した19世紀前半から、アイルランドのカトリック教徒が大量に移民して来ました。

 中部植民地は、オランダやスウェーデンの植民地として始まったので、出自的にも宗派的にも雑多でした。特にペンシルバニアは宗教の自由を保障し、アナバプティスト系のアーミッシュなどヨーロッパの宗教難民を受け入れました。

 19世紀には、中西部にドイツや東欧の移民が入植し、ルター派やルター派に宗旨の近いメソジスト派と、カトリックの宗派混合地帯ができました。モルモン教徒は、未開のユタ州の地に、集団で移住しました。メキシコ系アメリカ人が多いメキシコ国境沿いの地域やキューバ系アメリカ人が多いフロリダでは、カトリックが最大宗派です。