北米6億年の地史 ★超大陸の分裂(原生代) ★大森林の時代(古生代) ★恐竜の時代(中生代) ★氷河の時代(新生代) 北アメリカのダイナミックな山河の形成はプレートテクトニクス…大陸移動の歴史と関連付けるとよく分かります。 ノーザンアリゾナ大学のロン・ブレーキー教授に古代大陸地図をコピーさせていただきました。クリックで拡大地図が表示されます。 【 超大陸の分裂(原生代) 】
原生代末期の超氷河期
地球が生まれたのは今から46億年前、最初の生命は早くも40億年前に海で誕生しましたが、地表が冷えて固まり始めたのは、それよりずっと後のことで、以来、成長しながら、4〜5億年の周期で分裂と合体を繰り返してきているようです。 ブレーキー教授の最古の地図は、6億年前にさかのぼれます。原生代の末期で、ちょうど超大陸パノティア(旧ロディニア)が分裂を始めた時期に当りますが、この頃から後の大陸移動の様子は、各地の岩石に残る地磁気の測定により、かなり正確に知られるようになってきました。 原生代といえば、最も進化した生物でさえアメーバやゾウリムシなどの仲間の原生動物だった時代ですが、最近の研究では、その原生代の末期に、地球がすっぽり凍って雪だるま(スノーボールアース)になる超氷河期が何度か訪れたのではないかと考えられています。 正に最悪の生存環境だったわけですが、幸い、火山から噴出した二酸化炭素が長期にわたって蓄積し、徐々に地球温暖化が進んだおかげで、生命は絶滅の危機を乗り越えることができたそうです。
カンブリア紀 温かくなった地球で光合成バクテリアが大繁殖し、酸素濃度が急上昇します。生物の進化が一気に加速して、糸くずのような初期の多細胞生物の中から、メートル単位の大きさのエディアカラ生物群が誕生します。 古生代に入ると、今日に残る動物の祖先と、既に絶滅した奇異な生物が一つの生態系に集いました。「カンブリア爆発」と呼ばれる進化のピークを迎えたのです。 この頃から、ローレンシア大陸(北米とグリーンランド)は超大陸から分離してバルティカ(北欧)やシベリアと共に北上します。 南極には、ゴンドワナ大陸が残りました。北米は、その後、5億年前から2億年前にかけて赤道付近にとどまり、熱帯気候の下で動植物が繁栄しました。 オルドビス紀 オルドビス紀にはオウムガイの仲間がサンゴの海を支配していました。陸ではアパラチア山脈の造山運動が始まり、降雨で河川が形成された結果、次第に多様な生物が住める複雑な地形が準備されていきます。 シルル紀にはローレンシア(北米)とバルティカ(北欧)が衝突します。原始的な植物や三葉虫など節足動物の中に、それまで生物不在だった陸上に上がるものが出てきます。 【 大森林の時代(古生代) 】
デボン紀 デボン紀は「魚の時代」とも呼ばれますが、陸上でも石炭紀にかけて河川沿いにシダの大森林が形成され、昆虫や両生類が生息するようになりました。 石炭紀 石炭紀には爬虫類も登場します。ローレンシア(北米)にゴンドワナ大陸が衝突。アパラチア山脈のふもとは赤道の直下で、沼地や浅瀬に繁った森林は後の世で石炭となります。 ハネを持ち空を飛ぶ昆虫が出現したのもこの時代…酸素濃度が現在の倍に近い35%もあって、節足動物の運動能力が飛躍的に高まったものと考えられています。翼幅75cmの巨大トンボの化石が発見されています。 ペルム紀 ペルム紀には、分裂していた諸大陸が再結集して超大陸パンゲアが形成されました。現ニューイングランド地方は、この時に北米の一部となったのです。 生物の陸地対応も進み、河川から離れた乾燥地帯にはイチョウやソテツなどの裸子植物や皮膚を硬い皮で守る爬虫類が進出しました。特に哺乳類型爬虫類は不完全ながらも体温を一定に保つシステムを得て、寒暖差が激しい内陸部で、当時の生態系の頂点に立っていたそうです。 大量絶滅 ところが、ここで、古生代と中生代を区分する地球史最悪の大量絶滅が起きます。 シベリア中央高原で百万年にわたって続いたスーパープルームと呼ばれるマグマの噴出が主犯で、粉塵が空を覆って植物の光合成を阻害し、酸素濃度は現在の半分の10 %程度まで下がり、生態系の食物連鎖も途絶えたものと考えられます。 【 恐竜の時代(中生代) 】 三畳紀 三畳紀には、大量絶滅の危機を生き延びた爬虫類の中から、小型恐竜や翼竜、小型哺乳類が生まれてきます。 ジュラ紀
ジュラ紀は、皆さんご存じの大型恐竜全盛時代。超大陸パンゲアは再び分裂サイクルに入りました。現フロリダ半島の左右に亀裂が入り、アフリカと南米が遠ざかっていきます。 この頃、メキシコ湾の海洋底が北に伸びて巨大な入江を作りました。後の下ミシシッピー川の母体です。アパラチア山脈の西端は入江に分断されて、現アーカンソー州のワシタ山地になりました。 白亜紀 ローレンシア大陸の北部では、現スコットランド北部やグリーンランドが徐々に分離していきます。 北米の西海岸は、太平洋に繰り返し生じる火山列島が波のように押し寄せて成長していったように見えます。太平洋岸諸州の大半の地域も中生代の後半にでたのですが、現ロッキー山脈の東山麓は、その圧力で逆に沈み込み、海面も現代より200mも高かったため、北米のど真ん中には白亜海路と呼ばれる内海が広がっていました。 ロッキーの隆起が始まったのは白亜紀の後期です。いかにも恐竜らしいティラノサウルスなど肉食竜が活躍した時代ですが、白亜紀の中頃からは寒冷化が進み、劇的な気候の変化で、恐竜の生息環境は早くから危うくなってきていたのかもしれません。 植物で白亜紀に登場したのは、花を咲かせ実を結ぶ被子植物です。昆虫は密を吸って授粉を助け、哺乳類は実を食べて種子を運ぶ務めを果たし、新しい生態系が作られようとしていました。 K-T境界 ユカタン半島に巨大隕石が落ちたのはちょうどその頃でした。恐竜から進化した鳥類を除き、中生代に一世を風靡した恐竜が滅びて新生代が始まります。米国炭の4割を産するモンタナ/ワイオミング州のパウダーリバー炭田は新生代…6千年前の造山運動でできたものです。
新生代 新生代第四紀は、ついに人類(ホモ属)が登場した時代ですが、地球史の上では、かなり厳しい寒冷期に当ります。1万年前に第4氷河期が終わりマンモスなど大型哺乳類が滅びたのを区切りに、現地質年代=完新世が始まりました。第4間氷期と言い換えることもできます。 五大湖 氷河は、北米では、中世部一面を覆うまで南下しました。セントローレンス川の氷河が融けて大西洋に流れが通じるまで、東西をアパラチアとロッキーの分水嶺に囲まれ、初期の五大湖の水はミシシッピー川からメキシコ湾に注いでいました。 オガララ帯水層 氷河期には寒さで水面の蒸発が抑えられ、西部山岳地帯には巨大な湖がありました。グレートプレーンズには、ロッキー山脈の風化した土砂が積もり、オガララ帯水層と呼ばれる8州にまたがる巨大な地底湖があります。将来の枯渇が懸念されていますが、アメリカの穀倉地帯を支えている大事な水源です。 グレートベースン(大盆地) ロッキー山脈と西のシェラネバダ山脈の間にはボナビル湖という巨大な湖がありましたが、1万5千年前の大洪水でほとんどの水が流出し、現在はグレートベースン(大盆地)と呼ばれる地域になりました。内陸湖は、河川が運んできたミネラルを蓄積して塩湖になります。グレートソルト湖や、自動車のスピード記録挑戦で有名な周辺の塩の砂漠もボナビル湖の名残りです。 |